いずれにせよ、町家と呼ばれる都市住宅は、こうした宿命を背負っているものの、狭い間口のわりには長い奥行きをもって、江戸や京都の人びとの生活を支えてきたのである。
ところで、家相術においても、玄関のある側の幅より奥行きの長い家は、裕福をもたらし、長く繁栄する吉相の家であるとしている。
この言葉には2つの理由が考えられる。
ひとつは、税金対策のためである。
江戸時代には、間口の長さに対して税金がかかったので、間口が狭ければ狭いほど税金が安くすんだわけである。
もうひとつは、間取りがしやすいということである。
つまり、奥行きの深い家は、窓など家の開口部で外に面している部分が少なく、外敵の侵入から家を守ることができたからである。
また、プライベートな部屋を家の奥に配置できることも、間取りがしやすい理由のひとつである。
部屋には、外部の人間が入るところ、家族がみんなで使うところ、夫婦や子どもが個々に使うところなどがある。
そして、この順序にプライバシーを重んじて、外部から遠いことが望ましいのである。
奥行きが十分にあれば、このように配置することが可能なわけである。
江戸や大坂にもこうした細長い当時の敷地割が残っていたが、度重なる火災で町家の姿は失われている。
しかし、京都の町家を見ると、なるほどとうなずける。
たしかに外観が落ち着いていて現代人の郷愁をさそうものだが、実は住みよさという点でもなかなか工夫がこらされている住宅なのである。
私は、かねてから迷信といわれている家相にも深い関心をもち、家相に関する古書を、かなり調べてみた結果、家相のなかには、現代の科学としての建築学からみても十分に通用する真理が数多く含まれていることに気がついた。
家相は、古代中国文化の中心である黄河中流地域で生まれたようだが、そこには、いかに住みよくするか、いかにして安全な家をつくるかという人びとの長年の知恵がこめられているのである。
もちろん、それが占いの技術として発展したために、陰陽五行説などという難解というより論理にならぬ論理で体系づけられ、かざられていて、真理とそうでないものがゴチャ混ぜになっている。
そのために、いまではその全体を迷信とかたづけられている。
ところで、家相などは気にしないという人も、さて新築や改築に直面すると、意外に古来からの言い伝えが気になり、とくに老人が住む場合は「家相」を前面に押し出し、若い人たちは、どう理解してよいのか、とまどうこともあるようだ。
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